『ゲシュタルト療法~歴史・理論・実践』出版記念イベント
7月14日(日)
|オンライン-Zoom、オンデマンド視聴あり(3ヵ月間)
日時・場所
2024年7月14日 9:15 – 13:00
オンライン-Zoom、オンデマンド視聴あり(3ヵ月間)
イベントについて
長年のプロジェクトであった『ゲシュタルト療法~歴史・理論・実践(仮)』(原題:Gestalt Therapy - History, Theory and Practice )がついに日本語に翻訳され、出版されることになりました。
出版を記念して、翻訳者の方々に、本書の読みどころや、翻訳プロジェクトの歴史や裏話などを紹介していただくイベントを開催します。
また、原著の著者であるアンセル・L・ウォルトからのビデオメッセージもお届けします。
本書では、ゲシュタルト療法の中核的な理論である「現象学」に一章が割かれています。ゲシュタルト療法には、哲学や心理学などの基礎理論があります。私たちがゲシュタルト療法を実践するためには、こうした理論の理解がとても大切です。
そこで、出版を記念し、日本の現象学の泰斗である西研先生をお招きして、貴重なお話を伺います。
日本にゲシュタルトの理論が広まる一助となることを期待しています。ぜひご参加ください!
記念講演 『現象学入門 --心理療法の本質に迫るには』
9:30-11:00
西研(にし けん )
ゲシュタルトセラピーは、その重要な基礎理論として現象学を採用しています。この度、出版される『ゲシュタルト療法~歴史・理論・実践』では、現象学がゲシュタルト療法にとってなぜ重要なのか、そして実際のワークでどのように現象学のアプローチが使われるのかを詳しく論じています。
『ゲシュタルト療法テキスト』には、エポケー、水平化、記述など現象学についての解説があり、「事象そのものへ!(Zu den Sachen selbst!)」という現象学のスローガンと、F.パールズの「明らかなものを見る(See the obvious.)」には共通点があるとされています。しかし、哲学者の西研先生によれば、フッサール自身は「事象そのものへ」についてあまり詳しく論じておらず、その言葉だけが一人歩きしていると指摘しています。むしろ、現象学の方法である「本質観取」がゲシュタルト療法のワークに近いのではないかと指摘されています。
『ゲシュタルト療法~歴史・理論・実践』の出版を契機に、パールズたちが現象学をゲシュタルト療法に取り入れた意味を再確認し、実際のセラピーで現象学をどう活用すればよいのかを深く理解したいと考えています。そこで、西研先生を招いて、現象学について具体的に説明していただき、さらに現象学を体感するための実験=本質観取のワークを行っていただく予定です。これにより、ゲシュタルト療法と現象学の関係についての理解を深める貴重な機会となるでしょう。
以下は西先生のメッセージです。
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現象学は、ゲシュタルト療法の基礎をなすものとされていますが、フッサールやハイデガーのテキストはきわめて読みにくく、「なんだかよくわからないなあ」とお感じになっている方も多いと思います。
現象学とは何か。それは、互いの体験を交換しながら、それらの本質(エッセンス、共通する核心)を言語化していくための技法です。たとえば、恐怖や不安のような感情の本質や、幸福や自由といった概念の本質なども、現象学の射程に入ってきます。
臨床家の方々の場合には、互いの臨床体験を交換してその本質を蓄積していく方法として活用できると思います。たとえば、そもそも心理療法とは「何を」するものなのか、「治る」とは何か。そこでは「何が」起こっているのか。それらを明確にして共有していくことも、現象学の方法によって可能だと考えます。
当日は、現象学が「ゲシュタルト療法テキスト」でどのように扱われているか、というところからスタートして、現象学の「共通本質を取り出し・検証する技法」としての性格を、感情や幸福の本質をどうやって得るかの実例を挙げつつお話します。「心理療法の本質」については、私の友人の山竹伸二氏が展開していますが、これについても最後にふれたいと思います。
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プロフィール:
西 研(にし けん) 哲学者・東京医科大学客員教授(人間学教室)
1957年鹿児島県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了、社会哲学・現象学。京都精華大学助教授、和光大学教授、東京医科大学教授(哲学教室)を経て現職。教育出版小学校国語教科書『広がる言葉』編集委員。
哲学を、一人ひとりが自分と世界との関係を深く考えるための技術として再生することをめざし、現象学を活かした哲学のワークショップを大学、カルチャーセンター、企業研修、司法研修所などで行ってきた。NHKEテレ「100分de名著」では、カント、ルソー、ニーチェの回などに出演。
主な著書に、『哲学は対話する--プラトン、フッサールの〈共通了解〉をつくる方法』(筑摩選書)、『まなびのきほん しあわせの哲学』『読書の学校 プラトン「ソクラテスの弁明」』『100分de名著ブックス カント「純粋理性批判」』『同ブックス ルソー「エミール」』『同ブックス ニーチェ「ツァラトゥストラ」』(以上NHK出版)、『哲学のモノサシ 考えるってどんなこと?』『ヘーゲル 自由と普遍性の哲学』『哲学の練習問題』『集中講義 これが哲学!』(以上河出文庫)ほか多数。
原著者インタビュー (動画視聴) アンセル・L・ウォルト
11:10-11:25
アンセル・ウォルト
ケント州立大学の名誉教授であり、ゲシュタルト療法の教育や研究、国際活動、臨床実践に長年携わってきました。また『Gestalt Review』誌の副編集長として、ゲシュタルト療法の発展に貢献してきました。
原著の著者であるアンセル・L・ウォルトからのビデオメッセージをお届けします。
翻訳者講演+パネルディスカッション
11:25-12:25
室城隆之+岡田法悦+雫石政利
『ゲシュタルト療法~歴史・理論・実践』の翻訳を担った3人の訳者が、本書の読みどころや翻訳プロジェクトの歴史、裏話などを紹介します。
プロセスグループ
12:25-12:55
ブレイクアウトルームを使って、少人数のグループセッションを行います。今回のイベントでの、参加者それぞれの体験や意見を共有し、対話する時間です。
参加対象
日本ゲシュタルト療法学会会員および興味・関心のある方はどなたでも。
録画視聴
参加お申込みの方は、3ヵ月間の録画視聴が可能
【参考:『ゲシュタルト療法~歴史・理論・実践』(仮)目次】
序章 ゲシュタルト教授学:教えと学びの場の創出
第1章ゲシュタルト療法の歴史と発展
第2章 古典的ゲシュタルト療法理論
第3章 現代のゲシュタルト療法:場の理論
第4章 ゲシュタルト療法における現象学、実存主義と東洋思想
第5章 ゲシュタルト療法 変容の理論
第6章 ゲシュタルト療法の方法論
第7章 ゲシュタルト療法における文化的影響と考察
第8章 ゲシュタルト療法とスピリチュアリティ
第9章 子どもたちに対するゲシュタルト療法
第10章 青年期 : ゲシュタルトの視点からみた発達と実践
第11章 ゲシュタルトの視点からの家族・カップルセラピー
第12章 グループにおけるゲシュタルト療法
第13章 組織と大きなシステムにおけるゲシュタルトアプローチ
第14章 地域精神保健におけるゲシュタルト療法
第15章 薬物使用・虐待・依存症に対するゲシュタルトアプローチ
第16章 ゲシュタルト教育療法