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ゲシュタルト療法とは

ゲシュタルト療法とは

ゲシュタルト療法の哲学的背景

ゲシュタルト療法は、人が「自分らしく生きる」こと、自分にとって最良の「選択」が「自由」にできる自分自身でいること、そして、自分の周囲の人々や環境と好ましい「関わり」を持つ自分自身になることを目指す心理療法である。その哲学的背景を現象学、実存主義に置いている。

実存主義の祖とされる、S・キルケゴール(1813年-1855年)は代表的な著書『死に至る病』で、「真理は人間が自分自身で行動を表すときのみに存在する」として、自分自身でいないことは、まさに「死に至る病」としている。
ゲシュタルト療法に最も重要なことは、ファシリテーターが、クライエントの真の主体性と向き合い、クライエントと共に「あなた自身が、あなた自身を生きる」ことを歩んでいくことをサポートしていくのである。なぜなら、それが「あなたの真実」だからである。

F・ニーチェ(1844年-1900年)の、かの有名な言葉に「神は死んだ」があるが、すでに作られた価値観である善悪、常識、など社会規範ではなく、自分自身を生きるのだと述べている。それは「他人の視線」に操作されず、本当の自由を勝ち取ることが重要とされる。

M・ブーバー(1878年-1965年)の哲学は「対話の哲学」と言われる。私たちは、日常生活で人や物事と第三者的な「それ」と関係を持つことが多いが、「我-それ」という関係ではなく、「我-汝」という立ち位置を持ってこそ、精神的存在としての奥深いところで触れ合うことが出来る。「我-汝」の関係性はゲシュタルト療法の柱の一つである。徹底的に自分と向き合い、ただ一つの存在としての魂と、クライエントという一つの魂の向き合う真に水平(平等)な関係を実践する。

J・サルトル(1905年-1980年)の「実存は本質に先立つ」と云う言葉は、それまでの(主に西洋文化の)思考を180度転換させたともいえる。たとえば「長男に産まれたから家を継ぐ」など、それまでのように人のあり方を先行させるのではなく、人間存在は自由であり、自分が自分の人生を選択することを説いている。

これらの影響を受け、ゲシュタルト療法の始祖F・パールズらは、「今ここ」の実存として人を見る。
後に、パールズ夫妻はクルトゴールドシュタインの研究所で出会うが、ローラは実存主義の他にも現象学も学んでいて、ここから彼らは現象学の影響を強く受ける。

現象学を開いたE・フッサール(1859年-1938年)は、そのものの「存在」と「現象」を分析研究する立場である。キーワードとなるのは「現象学的還元」と呼ばれ、それは<われわれは世界の中に共にいるのでこれに気づくことは難しい。この共犯的関係(共にいること)を拒否することで、外から眺め、常識や諸確信(自然的態度)を横に置いて向き合い>他者との間に立ち現れる「現象」をみていく態度をとる。そこに立ち現れている様々な事柄はそのモノ以外の何者でも無い。従ってその観点から、ファシリテーターは、「エポケー」(判断停止)つまりあらゆる先入観をよそにおいて、「地平化」(クライエントのどの言動すべてをも同じ比重としてみる)することをすすめていく。そこで、あるがままに見る練習の一つとして「3領域の気づき」などを行う。

他に、M・ハイデッガー(1889年-1976年)、M・メルロ=ポンティ(1908-1961年)からは、人間存在を「世界-内-存在」つまり、「われわれはこの世界に投げ込まれた存在とする」や、「あらゆる人間的活動の母体は現象的身体であって」「人間の身体は感覚の共同体<ゲシュタルト>である」ゲシュタルト療法が、身体性を重視するのは「身体はこころの表現として表れる」ので、言葉だけではなく身体の声を聞くなど、身体性を重視する。

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